パン粉の原材料
パン粉の原材料はパンの原材料とほぼ同じです。それぞれの原材料の役割についてご説明します。
小麦粉
小麦粉と言えば世界で最も使われている穀物の一つです。
パン粉だけではなく、パンや麺・ケーキなど多くの食べ物に利用されており、日本人にもとても馴染みの深い穀物になっています。
小麦粉には種類があり、用途に合わせて使い分けています。
スーパーなどで見る「強力粉」「薄力粉」なども小麦粉の種類の分け方になりますが、その他にも等級で分けることもできます。
一般にパン粉はパンを作って粉砕しますが、多くのパン粉では通常のパンに使う小麦粉とは異なる小麦粉を使います。
通常のパンでは一等粉の強力粉を使います。
パン粉用のパンも主に強力粉を使いますが、多くは2等粉を使います。(そのため、一等粉を使っている場合はパッケージに1等粉と記載される場合もあります。)
この1等粉・2等粉ですが、これは小麦粉に含まれる灰分(かいぶん)の量によって決められています。
灰分とはミネラル分のことであり、これが少ないと1等粉となります。
灰分の量によって等級は以下の通りとなります。
等級 | 灰分 | 用途 |
特等粉 | 0.3~0.35% | パン、麺、お菓子 |
1等粉 | 0.35~0.45% | パン、麺、お菓子、パン粉 |
2等粉 | 0.45~0.65% | パン、パン粉 |
3等粉 | 0.7~1.0% | グルテン・デンプン |
末粉(すえこ) | 1.2~2.0% | 飼料 |
食パンなどは白くおいしくする必要があるため、1等粉を使います。
ですが、パン粉の場合は、油で揚げるためパンの状態での白さをあまり求められません。
実際に揚げたときの味・色などが重要となってきます。
そのため、比較的低コストの2等粉を使うことが多いのです。
余談ではありますが、2等粉は灰分が多いため、揚げ色がつきやすいという特徴もあります。
また、基本的には食パン同様に強力粉を使いますが、ものによっては準強力粉・中力粉・薄力粉を使ってパン粉を作ることもあります。
グルテン量による分類は以下の通りとなります。
種類 | グルテン量 | 用途 |
強力粉 | 11.0~13.0% | 食パン、菓子パン、フランスパン、パン粉、中華麺 |
準強力粉 | 10.5~12.5% | パン・中華麺、パン粉 |
中力粉 | 7.5~~10.5% | 日本麺、中華麺、タルト、クッキー、天ぷら、パン粉 |
薄力粉 | 6.5~9.0% | お菓子、料理 |
パンやパン粉に使われる小麦粉の多くは外国産の強力粉になります。
国産の小麦粉はグルテン量の少ないものが多く、中力粉や準強力粉などを使用しパン粉を作ることが多いです。
グルテン量が少ないとパン粉の食感が固くなることがあるため、改善のために小麦グルテンを添加し、食感を軽くすることもあります。
パン酵母(イースト)
パンやパン粉の原材料で最もポイントとなる原材料の一つです。
かつては「イースト」と呼ばれていましたが、現在では「パン用酵母」と呼ばれることもあります。
イーストは直訳すると「酵母」となり、文字通り酵母菌のことです。
パンは生地をこねた後に、イーストが発酵し、パンを膨らませます。
つまり、パンがふっくらしているのは、イーストの働きによるものなのです。
また、イーストが発酵するときにアルコールを作り出すため、それによりパン独特の香り付けが行われます。
「イースト」と言うと、工業製や化学製をイメージされる人がいますが、納豆菌と同じようなものだと思っていただければと思います。
また、イースト自体は自然由来のものですが、最近では「天然酵母」と呼ばれるものもあります。
これはこれまで使われていたイースト(パン酵母)とは別の種類の酵母菌を独自に培養した酵母菌となります。
そのため、これまでのイーストとは発酵力や香りなどが異なっている場合があります。
糖類(砂糖など)
糖類はブドウ糖・上白糖などが使われることが多いです。
主な働きとしてはイーストの発酵を手助けです。
イーストは発酵時に小麦粉のデンプンをエサに発酵しますが、デンプンの場合分解に時間がかかってしまい、うまく発酵しきれません。
そのため、糖類を追加することでイーストの発酵を促すことができます。
また、糖はパン・パン粉の色にも影響してきます。
焙焼式で焼いた場合、パンの状態でも糖分が多いと焼き色が濃くなります。
さらにパン粉を揚げたときに糖分が多いと揚げ色が濃くなります。
そのため、揚げ物をするときは素材が厚い場合は糖分の少ないパン粉。
素材が薄いときは糖分の多いパン粉にすると一定の揚げ色を実現することができます。
弊社では揚げ色の強いパン粉としてキシロース入りのパン粉も販売しております。
キシロースはイーストが発酵するときの材料にならないため、発酵による分解が行われません。
そのため、安定した色付けをすることが可能となっています。
食塩
食塩はパンやパン粉の味付けとして使われています。
また、パン生地の引き締めやグルテンの形成にも重要な役割を持っており、パンがふっくら焼き上がり、形を維持するための働きをしています。
パン粉の場合はパンとは異なり、さらに重要な働きをしています。
パン粉には電極式という独自の焼き方があります。
これはパン生地に電流を流し、その抵抗により熱を持たせパンを焼き上げる焼き方です。
そのため、パン生地自体が電流が流れやすくなっている必要があります。
食塩を十分にパン生地内に溶かしておくことで電流が流れやすくなり、電極式でもパンを焼けるようになります。
反対に食塩が含まれてない状態で焼くと、電流がほとんど流れず、パンが生焼けの状態で仕上がってしまいます。
生焼けになってしまったパン粉はパン粉と呼ぶには程遠いものとなってしまい、揚げたときの食感や色がとても悪いものになってしまいます。
油脂
パン粉の原材料に意外と広く使われているものが油脂分(油)です。
「パン生地に油を入れて大丈夫なのか?」と思われる方もおられますが、通常のパンでもバターやマーガリンなどを入れることで、風味や食感を変えている商品も多くあります。
パンに油脂分を入れた場合は、ふわっとした食感になったり、歯切れのよい食感になったり、入れる油脂の種類や量によって変わってきます。
パン粉の場合は使用する油脂として固形油脂の
・ マーガリン
・ ファッドスプレッド
・ ショートニング
や粉末性の油脂が多く利用されています。
ガリガリとしたパン粉の場合、パン生地に油脂分を練りこむことでさっくりとした仕上がりに変化します。
※トランス脂肪酸について
油脂分となるとトランス脂肪酸を気にされる方が多くおられます。トランス脂肪酸は脂肪酸(脂肪の一部)の一種で一般的に体に悪いイメージを持たれている物質の一つです。
欧米などではトランス脂肪酸の表示義務や規制などがあり、「トランス脂肪酸=体に悪い」というイメージを持たれている方も多くおられます。
ただ、日本の食品安全委員会は、日本人については「諸外国と比較して日本人のトランス脂肪酸の摂取量が少ない食生活からみて、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいと考えられる」との見解を出していることもあり、トランス脂肪酸の認知度も国内ではそれほど高くはありません。
また、マーガリンやショートニングなどはトランス脂肪酸を多く含む食品として知られています。
これは油脂を固形にする過程においてトランス脂肪酸が発生してしまい、含有量が増えてしまうからです。そのため、油脂メーカーなどは低トランスの油脂などを開発し、トランス脂肪酸の含有量が低くなるよう努力されています。
粉末性油脂も生成上の問題でトランス脂肪酸が発生してしまいますので、トランス脂肪酸が気になる方はご注意されるとよいかと思います。
(油脂メーカーの方々も日々改善の努力されていますので、ぜひとも応援してください!)
※トランス脂肪酸フリーパン粉について
日本では最終製品の段階でトランス脂肪酸の含有量が0.3%未満の場合は「トランス脂肪酸フリー」「トランス脂肪酸0」という表現が許可されています。トランス脂肪酸は油脂だけに含まれている物質ではありませんので、気になる方は最終的な含有量もご確認されるとよいかと思います。
業務用パン粉の選び方
「パン粉ってどうやって選べばいいのかわからない」「種類がいろいろあるけど、何を基準に選べばいいのか?」といったご意見をいただくことがあります。弊社では業務用パン粉の選び方というページをご用意しておりますので、是非ともご参考にしてください。
■ コンテンツメニュー
・ 業務用パン粉の選び方
・ 生パン粉と乾燥パン粉
・ 目の粗さ
・ 焼成(パンの焼き方)
・ 価格とコスト削減
・ パン粉の原材料
・ パン粉ができるまで
・ パン粉で揚げ物をするときのポイント